• 2021.02.08

男性にこそ知ってほしい。英国紳士が愛したラフ・ダイヤモンド1

ラフダイヤモンドの存在美

「ラフダイヤモンド」とは、採掘されたままで自然のままのダイヤモンド、「ダイヤモンドの原石」のこと。ラフダイヤモンドの形状は、「ストーン(多面的デザインの原石)」「シェープ(小振りで多様な形)」「クリーヘッジ(岩のような形状)」「マクレ(三角形で薄い)」「クラット(プレート状)」の5種類に大別することができます。

どの形態をもって我々の前に現れるのか。

我々が今手にしているダイヤモンドは、35億年から9億年前までの、地球の活動期に誕生したと言われています。( 最盛期は16億年前後といわれています) それも、人間が到達したことの無い、深さ約150キロメートル前後、6万気圧の圧力。1500度以上のマントルの中で、炭素同士が出会い、奇跡的に横にも縦にも結びつき始めたのです。そして一つの結晶となりました。さらに偶然は重り数億年前に、火山の噴火によってマグマとともに地上の近くまで登ってきたのだと言われています。

そんな奇跡のようなダイヤモンドの旅の中で、一つでも異なる要素が加われば、同じ形のダイヤモンドにはならないのです。

ダイヤモンドの原石自体の産出量は世界中決して少なくないですが、産まれたままの姿なのに美しいピラミッド型や八面体、表面はまるで研磨されたように艶がある。そんな上質なラフダイヤモンドに出会えることが稀にあります。

まるで現代のモダンアート作品のような美しさ。

そういった素晴らしい原石・ラフダイヤモンドに出会えた時の喜びは計り知れません。

紳士の社交場ブライトンで好まれたラフダイヤアクセサリー

1800年代後半のイギリスでは、しばしダイヤモンドの原石を用いたアクセサリーを身につけ社交会に訪れる紳士の姿がありました。

その年代といえば、ブリリアントカットも技術的に成熟の兆しを見せている頃。そんな時代に、なぜ原石を?そんな素朴な疑問は、当時の英国紳士達には無粋な疑問に映るかもしれません。

1841年イギリスのブライトンという土地にロンドンからアクセスする鉄道が開通すると、年間10万人を超える人々がブライトンに訪れるようになり、中でもブライトン競馬場には多くの紳士達が競馬に興じる為に集うようになりました。ブライトンはまさにジェントルマン向けの社交の中心地と言えたでしょう。そんなブライトンの街中にある宝飾店で、ダイヤモンドの原石使用したピンのオーダー記録が残っています。

皆さんもご存知のように、ダイヤモンドの原石というものは磨かなければ目映く光りませんし、ブリリアント・カットを施さなければ百貨店の宝飾ブースに並ぶことは無いでしょう。ではなぜ英国紳士達は原石を使って、しかもかなりのお金をかけてオーダーしたのか、とても興味深いです。

グランドツアー教育から生まれる古代ローマの文化・芸術を学んできた英国紳士達

イギリスでは17世紀末から18紀を通じて、良家の子息をグランドツアーと呼ばれる古典的教養の習得を目的としたヨーロッパ大陸への旅行に出す習慣がありました。付添いの家庭教師を連れてヨーロッパで社交や芸術を学び、優れた古美術や当時最先端の芸術品なども目利きで購入してくる、多額の費用を必要とした歴史巡礼の旅です。

今ではメトロポリタン美術館や大英博物館に収められている、古代ローマ時代に創られたラフダイヤをメインに配置したリング。当時の人々(自分たちの先祖にあたる)が、この原石に込めた祈りや願い、地球の産んだ宝への敬意を学び、目の当たりにした時、彼等は様々なインスピレーションを得た事でしょう。

若い時期にグランドツアーを経験した紳士達が、成人した後もラフダイヤモンドに対する想いを持っていたのは、想像に難しくはありません。

つまり、ラフダイヤをアクセサリーに選んだ英国紳士達のモチベーションの中には、「学び」と「歴史に対する敬意」が含まれている、知的教養と知的好奇心に起因するものであったのではないでしょうか。

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